相も変わらず長期間放置もいいところですいません;
ルサssがまたひとつ日の目をみれそうになったので投下します。
また夢ネタ(夢小説って意味ではなく)で申し訳ないこと、この上ないですが…;
大分前に突発的に書き殴って某様に送ったもの(…)に加筆修正したものです。
なんかそんなんばっかだな…でも本当にまとまってないものばかりなんで。
それでもよろしければリンクからどうぞ。
ルサssがまたひとつ日の目をみれそうになったので投下します。
また夢ネタ(夢小説って意味ではなく)で申し訳ないこと、この上ないですが…;
大分前に突発的に書き殴って某様に送ったもの(…)に加筆修正したものです。
なんかそんなんばっかだな…でも本当にまとまってないものばかりなんで。
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レヴェリー
ふかいふかい、いしきのそこ。
そこに、ボクはいた。そこに。
うえも下もわからない、そこに。
そこは、底ではないのかもしれない。色があるかどうかもわからない。
ボクは、胎児のように丸まり、膝を屈め、両手を顔で覆っていた。
泣いていた。涙は流れていない。けれど、間違いなく、ボクは泣いていた。
みないで。
どうか、みにくいボクを、みないで。
『サファイアからはなれろ!』
迂闊だった。
とっさの出来事で、彼女を守ろうと必死だったとはいえ、彼女の前であの顔をしてしまった。
あの日、あのとき。彼女が、怖いと泣いた、あの顔を。
ずくん。
「おまえはみにくいにんげんだ」
額の右あたりが、そう言ったような気がした。そして、疼きだした。
ボクは顔を両手で覆ったまま、呻くように言った。
「大丈夫…見られてなんかいないさ。あの角度からなら、彼女の視界には…」
…いや、どうだっただろうか。
あのときはとにかく彼女を守ろうと必死で…でも、彼女のことだから…いや、だとしても、あのときは、彼女もウコンさんの話を延ばすのに集中していたから……だから、
ずくん。
額の右あたりが、言う。そう、間違いなく、”言っている”。
「たとえ、みなかったとしても、あのこならおまえのこえをきいただけで、はんだんできるだろう」
そして、その声はねをはるようにこちらを徐々に蝕んでいく。ボクは思わず、苦笑いをする。
「……はは……確かに、そうかもしれないね」
――本当は、あのとき。
ウコンさんに杖で軽く小突かれて、我に返ったとき。
怖くて怖くて、たまらなかった。
めのまえがまっくらになって、ボクの世界が、この数年間必死に築き上げてきた世界が、がらがらと音を立てて崩壊し、今度こそ、すべてが終わるような気がした。
それを、何とか混乱することなく冷静に思考を巡らせて、ウコンさんの真意を探ることで、何とか自我を保とうとした。
でも、もしもあのあと、彼女がわずかでもあの顔に対する反応をみせたら、ボクは、
ずく ん 。
……いや。
「…大丈夫、だよ」
そう。そうだ。
すぐに、大丈夫だと思えたんだ。だって、
『うん! なんとなくわかったけん』
そう、彼女が言ってくれたから。そう、すぐに。
あの咄嗟の判断力と連携を要する場面で、ボクの意思を即座にかつ正確に汲み取ってくれた。力強く頷いてくれた。信頼してくれた。だから、ボクもそのままでいられた。
彼女は、本心とか感情といったものを隠さない。いや、隠せない。
だからこそ、ボクは自分の本心とか感情といったものを隠すことができる。彼女の強さに包まれて、臆病なままでいられる。…本当はそれが、ものすごく悔しくて、シャクでならないのだけれど。
だけど今は。今は、それが。
ボクは顔を覆っていた両手を、離した。
「あの子がボクを信じてくれることが…想ってくれることが、ボクがボクでいられる拠り所だから」
ちっぽけで惨めなボクのことを、好きだと言ってくれた人。
昔のボクではなく、今のボクを好きだと言ってくれた人。
だからこそ、彼女をもう怖がらせたくない…いや、彼女に拒絶されたくない、って臆病になってしまうんだろうけど。それでも。
「…たとえ拒絶されて、もう二度と彼女と道が交わることがなくなったとしても。それで、ボクの心にどうしようもない傷痕が残ったとしても。…もう、ボクは迷わないよ」
そう、まるで自分に言い聞かせるように言う。実際、言い聞かせたかった。
すると、不思議なくらいに、気持ちが穏やかになった。気づけば、自分を蝕んでいた根がゆるまっていた。
「きみがうらやましいよ」
額の右あたりが、そう言った。そこでようやく、その声がとても幼いものであることに気づいた。
そして、気づいた。とても根本的で、とても単純なことに。
だからボクは、
「何を言ってるのさ」
と、苦笑いを浮かべて言った。そして、額の右あたりに問いかける。
「キミはボクだろう? 昔の…ポケモンバトルが大好きでたまらなかった頃の…あの事件が起きた頃の、ボク」
額の右あたりが、急に無機質に硬直したような気がした。人の動作でたとえるなら、まるで屹立したような。
ボクはあえておどけた口調で続けた。
「何をふてくされているのさ。事実だろ?」
「べつに、そんなことないよ」
額の右あたりがそう言う。かすかな温度が、脈を打つような感覚はあったけれど、先ほどまでの灼けるような痛みが生じることはなかった。
「…ひょっとして、ボクが彼女を奪ったって、嫉妬してた?」
「そんなことない。だってボクは、」
「…あのとき、あの時間を一緒に過ごした彼女を好きだった?」
ボクのその言葉が核心をついてしまったのか、額の右あたりが戸惑いを隠せないかのように疼いた。実際、”彼”は戸惑っているのだろう。”彼”の存在を把握し認めたとたん、ボクはひどく冷静になっていた。
「……わから、ない。でも、いまのあのこもたいせつなのはたしかなんだ」
「…あの子をボクみたいな、綺麗好きでバトル嫌いな男に、それもキミを捨てた男に奪われたみたいな気がした、とか?」
「…………」
長い沈黙が流れる。
そして、
「…ごめん。あたまではわかってるのに」
ただそれだけを、泣きそうな声で額の右あたりが言った。
ボクはすこし大げさに息を吐いてみせた。そして、言った。
「キミはずっと、ボクと一緒にいたじゃないか。…確かに今のボクはポケモンコンテストが大好きだ。でも、ポケモンバトルを…キミを忘れたくて無理に好きになったんじゃない……いや」
ボクは思わず苦笑いをして、かぶりを振った。
「…いや。それはちょっと、嘘かな。確かに最初は忘れたくてたまらなくて、がむしゃらにコーディネーターへの道を進んでいっていた。けれど、」
「だんだん、ほんとうにコンテストがすきになった」
額の右あたりが間髪入れずにそう言ったことに、ボクは少し驚いた。そして微笑む。
「そうだよ。ポケモンたちをかっこよく、かわいく、うつくしく、たくましく、かしこく伸ばす手助けをするのが…より高見を目指していくのが、本当に楽しくてたまらなくなった」
「…じゃあ、やっぱりきみはっ。……もう、バトルは……ボクのだいすきな…ポケモンバトルは…」
泣き出しそうな声。
”ボク”を抹消してしまうのかという、悲痛な叫びで再び疼き出した痛みに顔をしかめつつも、ボクはなるだけおどけた調子で答える。
「そりゃあ、まだ心の整理がついていないからね。ボクだって、そう簡単に心の切り替えができるほど、人間できてないよ。そもそも、ひねくれ者だからね。でも…」
「……でも?」
ボクはもったいぶるようにうーんと言って、少し大げさに頭を振った。
「まだ、断言はできないなあ。でも…キミも、見ていただろう?」
「……バトルドームでのエメラルドとのバトル。ずかんしょうゆうしゃたちのトーナメント。そして…」
「キミと彼女の目標の人が、あの場にいただろ?」
「うん! はじめて…このめで、みた。とても、かっこよかった!」
昔のボクと彼女の目標だった人。まさかあのような形で出逢うことになるなんて思わなかった、カントーのポケモンリーグの優勝経験者であり、何よりボクら図鑑所有者の先輩であった人。
「ボクも初めて見たよ。当たり前だけど。最初に見たのが石像だったっていうのも、びっくりしたけどね」
「…それで。それでまた、ポケモンバトルがすきになれるかもっておもったの?」
「いいや。あの人に…レッドさんに会ったことが、というか、レッドさんたち先輩方とバトルトーナメントをしたことが、”また好きになれるかも”って思った決定打ではないよ。もちろん、大きなきっかけではあると思うけど」
「? じゃあ、そのけっていだというのは、なに?」
「彼女が、ボクが負けたあとだってのに、おおはしゃぎしたことだよ。良いバトルだった、って。それが大きな決定打だった」
「…なんで?」
「あれー、わからないかい?」
あえてわざとらしく、嫌味ったらしい声を出してみた。そして、言う。
「好きな女の子の前では、かっこつけたいってのが、男ってもんなんじゃないの?」
あの頃のボクがポカーンと口を開け、目を丸くしているのが、何故だかよくわかった。それがおかしくて、何故だか嬉しくて思わず笑い声がでてしまった。
「あはは、そんな呆れた顔しないでくれるかな?」
「かおなんかみえないだろ」
「結構、重要な動機だと思うけど? 男だとか何とか言うのは…まあ、正直、自分で言ってても気恥ずかしいけど……あ。あともうひとつ、重要な動機があった」
「なに?」
ボクは満面の笑みをして、言ってのけてやった。
「好きな女の子にポケモンバトルで負けたくない、ってのが、男ってもんなんじゃないの?」
…どっちもおなじようなものじゃないか。
そんな呆れたような苦笑いのような声は、少しずつ遠くなって遠ざかっていった。そして、それと入れ違いになるように遠くの方からドンドンと音が聞こえてきた。その音は、だんだん近くなってくる。なにやらやかましい声とともに。
ドンドンという音は、ボクの部屋のドアを乱暴に叩く音だ。
何やらやかましい声は……大好きで大切な、そう、ボクの大切な女の子の声だ。
ボクはゆっくりと、目を、開けた。
「いい加減起きると、ルビー! 今日は、」
「はいはい、ごめんごめん。今行くよ、サファイア」
これで、許してくれるかい? 昔のボク。
でも、キミは消えたわけじゃない。だって、すぐここにいるじゃないか。この、額の右あたりに。
キミとボクは、ボクとキミは共にある。今までも今もこれからも、ずっとずっと。そしてもちろん、あの子とも。
あの子の目の藍色が、蒼穹と共に今日も美しく輝いてボクの心を弾ませる。
End.
+++++++++
思えば、先のイノセンスと併せて、自分の中のルサ像というものをまとめたくて書いているような気がしてきました。
これで一段落ついて、”傷痕”というテーマから抜け出して作品作れたらいいなあと思うのですが…果たして(汗)
ここまでご拝読、ありがとうございました!
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